12月になってから、ぎっくり腰になって初めて鍼灸院に来たという人がいました。季節の変化で体調を悪くする人が増える季節です。コロナではなくても、寒さゆえの風邪や胃腸の不調も起こりやすいです。

 

東洋医学では病気になる原因を大きく三つに分けています。

内因(ないいん) 大きな悲しみ、怒り、怖れ、驚きなどの感情によって病気になる。精神的ストレス。

外因(がいいん) 気候の変化によるストレスによって病気になる。暑さ、寒さ、湿気、乾燥など。体の中の原因ではなく身体の外の原因。

不内外因(ふないがいいん) 内因でも外因でもないもの。食べ過ぎ、飲み過ぎなど食生活の不摂生。怪我や過労。房事過多(ぼうじかた)など。房事過多とはセックスのやり過ぎという事です。

 

寒くなってくると気候変化のストレスで体調を悪くする人が急増します。上で挙げた「外因」由来の不調です。「寒邪(かんじゃ)」と呼んでいます。寒くなると起こる症状は皆さんももう経験があるかもしれません。患者ならぬ寒邪をまとめてみます。

 

1 寒邪は凝滞の性質があるので血液の流れが悪くなります。

2 寒邪は収斂(縮まる)の性質があって、筋肉のこわばりも起こりやすいです。

3 寒邪は陽気を損ないます。陽気がなくなると何が起こるかというと、体が冷えて尿が近くなる。尿の量も薄くて多くなる。

4 そして、寒邪が臓器まで影響すると腹痛、下痢、嘔吐が起きます。

1と2の合わさって、鍼灸院ではぎっくり腰や関節痛の訴えが増えます。

 

東洋医学の理論は現存する中国最古の医学書の『黄帝内経(こうていだいけい)』という本の中に書かれています。鍼灸の学校で学ぶ理論の原典がこの本です。『黄帝内経』の内容は東洋医学の理論は『素問(そもん)』、実践は『霊枢(れいすう)』の中に書かれています。理論編の『素問』の中には様々なことが書かれていますが、季節ごとの過ごし方の記載もあります。

私が過去に行っていた勉強会のテキストに『黄帝内経』の中の冬の養生の原文があります。冬の過ごし方の部分に赤線を引いてみました。

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古典を意訳します。

 

冬の三か月は閉蔵の時期です。動物が冬眠するように人間もゆったりと過ごしましょう。夜は早く寝て、朝も遅めに起きます。激しい運動もなるべく避けて、運動するなら天気が良い日に適度にしましょう。夏と同じように過ごしていると陽気が外に漏れ出てエネルギーを消耗してしまいます。寒さから身を守り、体を暖かく保ちましょう。冬にエネルギーを蓄えて、来るべき春に向けて体力を整えましょう。冬は体力を消費するのではなく、蓄える時期だと思っておいてください。

 

古代と現代とは環境も変化していますが、冬はまずは暖かくするというのは変わりません。服装の工夫で熱を逃がさないようにしてください。首元を温めるのはオススメですし、手袋も保温には便利なアイテムです。乾燥を訴える方も増えています。乾燥が過ぎると皮膚の防御機能が低下してしまいます。お風呂の後の保湿も工夫してみてください。

 

ここ数年、季節が随分と乱れていると感じます。季節の過ごし方にプラスαで気をつける必要があるようです。とはいえ、基本的な四季は変わりません。12月に入って例年並みに寒くなっています。
「寒邪」に気をつけてご養生ください。

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