3月前半にシアターコモンズというフェスティバルの中のセラピーパフォーマンス、百瀬文「鍼を打つ」で鍼師として出演しました。

百瀬文「鍼を打つ」

 

シアターコモンズについてはディレクターの相馬千秋さんがイベントホームページに記載しているので、そちらをご覧ください。コロナ禍だからこそ集まり方を工夫した珠玉のプログラムの数々で大成功に終わったようです。そのうちの1つは、第24回 文化庁メディア芸術フェスティバル アート部門で大賞を受賞されていました。

 

シアターコモンズはアートや演劇関係の方々にとっては知る人ぞ知るフェスティバルです。来場されていた方々もコアなファンの方々や新しいものへのアンテナを張っている人たちなんだなという印象を持ちました。私の個人ブログにシアターコモンズの体験について書きましたらもの凄いアクセス数がありました。関係者の方がSNSで紹介してくださったせいもあるかもしれませんが、それだけシアターコモンズのファンがいるという事だと思います。百瀬さんのプログラム「鍼を打つ」は予約開始から二日で完売してしまったそうなので、相当な人気ぶりだったようです。

 

「鍼を打つ」は通常の鍼施術とはかなり違う体感パフォーマンスです。施術者も体験者もイヤホンを付けて、イヤホンからは「特別な問診票」の文章が聞こえてきます。問診票にあらかじめチェックを付けてもらい、鍼師はそれを読んで解釈をします。
問診票には体の状態を問うものも書かれていますが、通常の問診表ではありえない、戸惑うような種類の方が多いです。中には、こんなのにチェック入れる人いるのかな?と思ったものもありました。その設問にチェックを入れている人もいて内心ギョッとしたり。私の方もそれぞれのチェックの入れ方を見て、考えるのが面白かったです。

 

設問はこんな感じです。

「国境はなくてもいいと思う」
「手放したいものがある」
「寂しい」

プライベートな領域の質問です。人に話す事はなくても、自分の内側では大きな位置を占める種類のものが半分以上。質問に答えるのも一種のセラピーではないでしょうか。

 

ベッドに横たわると、その設問の文章がイヤホンから聞こえてきます。
そんな言葉を聴きながら、無言で鍼を打たれます。
鍼が初めての人も多かったようですが、相当に特殊な体験だと思います。「身体が劇場になる」という紹介がありましたが、その表現は正しいかもしれません。

 

鍼を打つ方にとっても特別な体験でした。何も話さずに鍼を打つことはないので新鮮です。普段は問診で色々な話を聴いてから鍼を打ちます。打たれる側にとっては、初対面の人に(しかもマスクで目しか見えない)身体を触られ、鍼を打たれる。しかも、特別な問診表は心の琴線に触れるような内容だったので、自分自身の感情との対峙をしながら鍼の侵襲を受けるという滅多にないセラピーです。

制限がある中で鍼を打ったことで、沢山の気づきがありました。このイベントを体験したことで、普段の臨床についても考えさせられる事が多く、非常に勉強になりました。

 

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好評だったので再演があるかもしれません。特別な問診票の内容については一部に留めておきます。

 

制作の方が写真をくださったので、リハーサルの時に撮った写真を貼ります。出演した鍼師達、スタッフの方々です。

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©シアターコモンズ’21 / photo: Shun Sato

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