鍼灸の歴史は古く、紀元前2,000年以上前に遡ります。ですが、美容鍼の歴史は浅いです。

『医道の日本』という鍼灸の専門誌がありますが2006年にやっと臨時増刊号で『特集 美容と鍼灸』を組んでいます。アメリカで女優さん達が美容鍼灸を取り入れ始めてから大人気になり、それが日本でのブームの引き金になっています。

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先日、美容鍼のセミナーで興味深いものを受講しました。

鍼灸でも科学的に人体に作用するメカニズムがどんどん解明されてきていますが、美容鍼もそうです。実際に美容鍼でできることできないことがはっきりしてきています。美容鍼が流行り始めた頃と今とでは鍼灸師側の認識も変化していると感じます。

皮膚の老化の理由

  • 表皮の水分量の減少  ( 水分量が少なくなることで表皮のボリュームが減る→ハリがなくなる→たるむ)
  • 脂肪などが垂れる
  • 表情筋の筋力低下
  • 支持靭帯の緩み
  • 骨格の変化(骨の容量減少)

 

美容鍼が有効なのはなぜ

美容鍼の利点は真皮まで刺激を与えることができるという所です。化粧品は表皮までしか影響を与えることができません。表皮にはバリア機能があるので化粧品も異物として捉えられ、表皮の角質層までしか入らないからです。逆に言うと表皮の保湿は努力で補えるということです。保湿されていないと、乾燥や角質の肥厚で美容面だけでなく防御作用も失われます。

表皮 角質層、顆粒層、有棘層、基底層 0.2 mm 肌のうるおい、バリア機能
真皮 1.8mm 皮膚の弾力、肌のハリ

 

皮膚組織。ヒューマン・アナトミー・アトラス2021 Visible Body ビジブル・ボディ提供の画像に文字を入れています

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歳を取る、日焼けにより角層がどんどん厚くなりますが、これがくすみになります。ターンオーバーをしっかりさせることが重要ですが、鍼灸治療では真皮に刺激を与え、血流促進を進めることで、ターンオーバーを活性化することができます。

 

皺(しわ)について

美容鍼でEDO鍼灸治療院に来る方で皺(しわ)が気になるという方は多いです。しわは薄くできるものとそうじゃないものがあります。

  • 浅いしわ 真皮層に達していない陥凹
  • 深いしわ しわが真皮まで達しているもの、つまり深く刻まれてしまったシワ、常に存在しているようなしわ

刻まれてしまった深いしわは残念ながら鍼灸治療では消すことはできません。真皮まで達しているものはコラーゲンが切れているのでそれを鍼灸でどうにかすることは不可能です。

ただし、真皮にまで届いていない種類のシワなら希望があります。表情筋の収縮が多い所にシワができますから、予防的に鍼を受けるのが将来の自己投資になるのだと思います。

 

美容鍼でできない事

美容鍼で絶対にできないことは骨格の経年変化を変えることです。顔面の骨も年齢によって骨格が変わっていきます。骨格の変化で顔のしわの寄り方やたるみができます。当然ですが、骨の変化を戻すことはできません。

 

新しいアプローチ

筋膜、ファシアが少し前にブームになりましたが、美容鍼でも筋膜や筋肉、靭帯の付着部を考えながら鍼を打つ方法があります。鍼の本数は多くなくても効果が出せる方法を取っている鍼灸院もあります。美容鍼で水分量をあげられるということも分かってきています。自分で自分を治療して(自己治癒)自分の素地を上げていくというのが鍼灸治療の基本です。美容整形のように劇的な変化はないですが、未来のための予防的な意味が美容鍼にはあります。私自身が今まで美容鍼に持っていたイメージが変わりました。真皮までアクセスできる鍼はほかに類を見ない方法だと思います。

顔や頭の緊張を取ること、ツボに刺激を与えることでお顔以外にも良い影響が出ます。
お顔への鍼、もっと活用して頂きたいです。

 

中島

 

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