お灸の紹介
鍼灸は「はり」と「きゅう」です。国家試験でも日本では「はり師」と「灸師」の資格は別れています。鍼灸師は両方の道具を使って治療をします。
フランス人で鍼灸に来る方が増えていますが、「鍼(Acupuncture)を受ける」という表現をするので「お灸(Moxibustion) をしますよ」と言うと「お灸って何?」という方がいます。
そこでお灸をすると「気持ちがいい!香りが落ち着く!」と言われます。外国人の方はほぼ全員と言っても良いほどお灸の匂いが好きな人が多いです。そんなお灸の紹介をします。
- 点灸
艾(もぐさ)を米粒より小さくひねって線香で火をつけます。EDO鍼灸治療院では火傷を避ける為に灸点紙の上にお灸を据える事が多いです。指の関節痛や動きづらさがある人には効果的な刺激を与える為に皮膚に直接据えます。お灸のヤニがつきますが、これは消えます。目的によって使い分けます。
背中の点灸。
親指を広げづらく痛みがあるという方への直接灸。下の赤いのは紫雲膏(しうんこう)という漢方薬の軟膏です。
下の写真は韓国のお灸で細い棒のような状態で売っている「糸もぐさ」です。
背中でも灸点紙を使わないで直接皮膚に据える鍼灸師もいます。ただし、昔より少なくなっています。火傷をさせる事でお灸を据えた箇所に白血球が増加し、菌を殺してくれるという効果もあります。足の裏にお灸をする時は直接皮膚に据えて、かなり黒くなるまで続けます。足の裏は胃腸障害、不眠、冷えなどでお灸をすることが多いです。
- 棒灸
鍼を刺した所を穏やかに温めたい。腰周りを全体的に温めたい。冷えがある方。冷えていなくても筋肉の緊張を取る。リラックスの目的でも使います。ボンワリと温かくて気持ちがいいお灸です。
下の写真のような棒灸を固定するものがあって、棒灸を固定して温めながら別の場所に鍼や灸をします。
- 灸頭鍼
棒灸に似ていますが、鍼の上に艾を丸めて乗せて、そこに火を付けます。灸頭鍼をよく使う鍼灸師も多いです。「昔は鍼の上のもぐさが落ちないように監視するアルバイトがあった」とある先生が話していました。写真は二つだけですが、広範囲に沢山する場合もあるからです。
- 台座灸・間接灸
もぐさと皮膚との間に空洞を作ってあるお灸です。「せんねん灸」が有名です。せんねん灸は薬局でも売っているので馴染みのある人もいると思います。このタイプのものを使って自分でお灸をする人が増えています。下の写真は私が最近使っている「釜屋」のお灸です。火をつけるだけなのでとても簡単です。
ここに書いたお灸はお灸の例です。お灸は他にも色々とあって、枇杷葉灸やにんにく灸、塩灸、味噌灸のように間接的になにかを置いてお灸をする隔物灸(かくぶつ灸)もあります。中国では漢方を貼ってお灸をする方法もあります。
枇杷葉灸はガン患者さんの緩和ケアでよく使われていますし、味噌や塩などは昔から家庭でも養生でやっていたものでした。
お灸を沢山していると「タバコの匂いですか?」と言われることがありますが、実はお灸の匂いです。お灸は効果抜群なのですが、煙がたくさん出るのが難点。しかも四人の鍼灸師がいろんな種類のお灸を使っているので、匂いが交じり合ってなかなかの香りのマリアージュです。中国にはお灸の煙を吸い込むバキュームのような機械があって、それを稼働させながらお灸をしています。日本では滅多に見ません。
空気清浄機などで工夫はするのですが、寒くなってくると窓を開けるのもなかなかできず、お灸の匂いが充満していることもあると思います。中に入ったとたんに煙いこともあります。なるべく工夫するようにしていますが、「鍼灸院」の匂いをご理解いただければと思います。
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